
メダカを飼育するうえで切っても切り離せない存在となりつつある光合成細菌ですが、その関係性は単なる浄化剤としての役割に留まりません。
メダカと光合成細菌の相性が良い最大の理由は、水槽という閉鎖的な環境において、お互いの生存戦略が完璧に合致している点にあります。
メダカと光合成細菌の関係とは
光合成細菌は、その名の通り光を利用して活動する細菌の総称ですが、アクアリウムの世界で主に注目されるのはロドシュードモナスなどの紅色の細菌です。
メダカとの直接的な関わりにおいて最も特筆すべきは、メダカが排出するアンモニアや有機物を、光合成細菌が栄養源として取り込み、無害化あるいは有用な成分へと変換してくれる点です。
一般的な濾過バクテリアは酸素を必要としますが、光合成細菌は酸素の少ない環境でも活動できるため、底砂の奥深くなど酸素が届きにくい場所の腐敗を防ぐ効果があります。
また、光合成細菌自体が非常に栄養価の高い微生物であり、メダカが食べることで、体色を鮮やかにするカロテノイドやビタミン類を摂取できる天然のサプリメントのような役割も果たしています。
稚魚の生存率向上
特にメダカの針子と呼ばれる孵化直後の稚魚にとって、光合成細菌は餓死を防ぐ重要な存在です。
生まれたばかりの稚魚は口が非常に小さく、市販の人工飼料を食べることが困難ですが、光合成細菌は細胞サイズが非常に小さいため、稚魚が容易に捕食できます。
水中に光合成細菌が豊富に存在することで、稚魚は常に餌に囲まれている状態となり、初期の餓死リスクを劇的に下げることが可能になります。
光合成細菌は自然繁殖するのか
飼育者の間でよく議論されるのが、光合成細菌が水槽内で自然に増えるのかという疑問です。
結論からいいますと自然界の至る所に存在しているため、水槽内に全くいないわけではありませんが、私たちが期待するような密度で自然に大増殖することは極めて稀です。
光合成細菌が優位に増殖するためには、強い光、特定の有機物、そして他の微生物との競合に勝てる環境条件が必要となります。
一般的な観賞魚用の水槽では、光合成細菌が増える前に他のバクテリアや藻類が栄養を消費してしまうため、自然発生を待つだけでは水質改善や餌としての効果を実感できるレベルには達しません。
効率的な増殖に必要な条件
水槽内で光合成細菌の密度を維持し、あるいは意図的に増やすためには、専用の培地やエビオス錠のような栄養源を添加し、日光が十分に当たる場所で管理する必要があります。
つまり、メダカを泳がせている飼育水の中で自然に増えていくのを期待するよりは、別容器で培養した濃縮液を定期的に投入するスタイルが一般的です。
一度投入された光合成細菌も時間の経過とともに他の微生物に食害されたり、環境の変化で死滅したりして減少していきます。
そのため、自然繁殖による持続的な供給を狙うのではなく、外部から補給し続けることで、メダカにとって最適な環境を維持していくという考え方が現実的です。
光合成細菌を自宅で培養し、メダカの飼育水に適切に投入するための具体的な手法について解説します。
市販のものを買い続けるよりもコストを抑えられ、常に新鮮な光合成細菌を利用できるメリットがあります。
光合成細菌の培養手順
光合成細菌の培養は、基本的には種菌となる液体に栄養源と水を加え、光に当てるというシンプルな工程で進みます。
まず、清潔なペットボトルを用意し、そこに種菌(市販の光合成細菌液)を容器の3分の1から半分ほど入れます。
残りのスペースには、カルキを抜いた水道水、あるいはメダカの飼育水を満たします。
ここで重要になるのが、細菌の餌となる培養液(ふやし君などの専用資材やエビオス錠)の添加です。
エビオス錠を使用する場合は、500ミリリットルのペットボトルに対して1錠から2錠を目安に投入してください。
その後、容器の中に空気が残らないように口切りいっぱいまで水を満たして密閉します。
これは、光合成細菌が空気を嫌う性質を持っているためで、酸化を防ぎ、他の雑菌が繁殖するスペースをなくす狙いがあります。
培養に適した環境と完了の目安
セットしたボトルは、直射日光がしっかり当たる屋外や日当たりの良い窓際に設置します。
光合成細菌は光エネルギーを利用して増殖するため、日照時間は長いほど有利です。
気温については20度から30度前後が理想的で、冬場などの低温期にはヒーターを利用して加温するか、室内で植物育成ライトを併用すると効率よく増えます。
培養が進むともともと薄かった赤色が次第に濃くなり、最終的には赤ワインのような深い色合いに変化します。
沈殿物がある場合は、一日に一度ボトルを軽く振って中身を攪拌してください。
通常、夏場であれば一週間から十日程度、冬場であれば二週間から三週間ほどで完成します。
飼育水への具体的な投入量
完成した光合成細菌をメダカの飼育水に投入する際、厳密な上限はありませんが、飼育環境を安定させるための目安となる量があります。
日常的な水質維持が目的であれば、飼育水10リットルに対して3ミリリットルから5ミリリットル程度を数日おきに投入するのが一般的です。
水換えを行った直後や、梅雨時期などの水質が不安定になりやすい時期には、少し多めに10ミリリットル程度入れることで、急激な水質悪化を防ぐことができます。
稚魚の育成における投入のコツ
稚魚(針子)の生存率を高めるために使用する場合は、成魚の飼育環境よりも頻度を上げるのが効果的です。
一日に一度、飼育水がわずかに赤みを帯びない程度の量(数滴から数ミリリットル)をスポイトなどで直接、稚魚が密集している場所に散布します。
光合成細菌も生き物ですので、極端に大量に入れすぎると酸欠を引き起こすリスクがゼロではありません。
水の透明度を観察しながら、濁りがひどくならない範囲で継続的に添加することが、健やかなメダカを育てる鍵となります。